「赤ちゃんの為に食事には気をつけたい」と、どのママも思うもの。でも具体的にはどうすればいいのでしょう?つわり中で思うように食べられなかったり、一方食欲が出すぎて体重増加を指導されたりとトラブルが起こりやすい妊娠中の食生活。今回は妊娠中の食生活をうまく乗り切るコツや積極的に取りたい食品などを中心に4つのポイントでまとめてみました。
妊娠中の理想の食生活とは
お腹の中に赤ちゃんがいるとわかってから、食べるものまで気を遣うようになったママも多いはず。自分の為の食事から赤ちゃんの為の食事に変えたいけど、どういうことに気をつければいいのでしょう?ここでは食事の基本から赤ちゃんに与える影響までを3つにわけてまとめました。
食事が赤ちゃんの成長に与える影響は?
妊娠中にママが食べたものは胎盤を通じて赤ちゃんの栄養になります。赤ちゃんの成長には多くの血液が必要なので鉄分が欠かせませんし、骨や歯を作るの為にはカルシウムが必要になります。また体重が気になると言ってダイエットしカロリー不足になると赤ちゃんの成長がゆるやかで低体重児になる傾向があります。
・赤ちゃんの成長には多くの血液が必要 → 鉄分の摂取が欠かせない ・骨や歯を作るの為にカルシウムが必要 ・無理なダイエットによる栄養不足 → 赤ちゃんが低体重児に |
情報として積極的に摂りたいものとそうでないものを知っておき、何事も過剰に反応しないことも大事です。
つわり中の食事のポイント
つわりで食べるものも食べられないと赤ちゃんに影響があるのではないかと心配になりますよね。しかし、つわりがひどい16週頃までは食べられないからといって赤ちゃんに影響するということはありません。この時期だけは栄養バランスは気にせずに食べたいものを食べたい時に食べるよう心がけましょう。
ポイントとして、熱いものより冷たいもの、酸味のあるものが食べやすい事が多く、空腹はさけるようにして水分はしっかり摂りましょう。低血糖になると吐き気が起きやすいのでバナナやパン、おむすび、チーズなどすぐ食べられる物を用意しておくのもいいですね。
妊娠中の食事で基本的なこと
妊娠中も普段と変わらずにバランスのとれた食事を良く噛んでゆっくり食べるように意識しましょう。
具体的には主食を中心に副菜+主菜+乳製品+果物を一緒に摂るようにします。ジャンクフードなど味の濃いものは極力避けた方が良いですね。妊娠中にバランスのとれた食生活に慣れておくと、母乳育児にも役立ちます。
・主食:主に炭水化物とエネルギーの供給源になるもの パン・ご飯・おもち・うどん・そば・スパゲティなど ・副菜:主にビタミン・ミネラルと食物繊維の供給源 野菜・おいも・海藻類・きのこなど ・主菜:主にたんぱく質・脂質、エネルギー・鉄分の供給源 肉・魚・大豆・卵など(脂質の少ない豆腐・納豆・焼き魚がおすすめ) ・乳製品:カルシウム・カリウムなどのミネラルの供給源 牛乳・チーズ・ヨーグルトなど ・果物:ビタミン・ミネラル・食物繊維などの供給源 ミカン・バナナ・キウイ・カキ・イチゴ・モモなど |
妊娠中の体重管理について
赤ちゃんの為に食事に気をつけたいと思っても、妊娠中は時期によって食欲も違いますし好みも変化します。つわりによる体重増減も人それぞれで悩むことも多いですよね。ここでは、理想的な体重管理をする為に知っておきたいことを5つのポイントに分けてみてみましょう。
理想的な体重の増加はどれくらい?
一般的に妊娠中の体重増加は7~10kg程度が理想的といわれています。しかし、これには妊娠前の体型によって個人差があり、理想体重を知る目安としてBMI(体格指数)という数値があります。
BMIに基づいて体重増加の目安をみてみることにしましょう。
BMI=妊娠前の体重[kg] / (身長[m]×身長[m])
妊娠前の体重:50kg、身長160cmの方の場合
BMI=50/(1.6×1.6)=約19.5
・BMI値18.5未満(やせ型) :妊娠中の体重増加目安9〜12kg ・BMI値18.5~25未満(普通):妊娠中の体重増加目安7~12kg ・BMI値25以上(肥満) :妊娠中の体重増加目安5~7kg |
太りすぎるとどうなる?
過剰に体重が増加すると、ママの腰や背中、足への負担が大きくなって動くのが大変になってきたり、余分な脂肪が産道につくとその厚み分だけ産道が狭くなりお産が進みにくいこともあります。また、妊娠高血圧症・糖尿病・微弱陣痛を引き起こす要因にもなりますので、このようなトラブルを避けるためにも体重管理が必要になってきます。
・腰、背中、足などの身体的な負担が増える ・余分な脂肪によりお産が進みづらくなる ・妊娠高血圧症、糖尿病、微弱陣痛の要因 |
痩せすぎるとどうなる?
一方で過剰なダイエットなどで体重が増えないと、赤ちゃんの成長がうまく進まなかったり低体重児で産まれてくるなどのリスクが高まります。つわり時で多少体重が減るのは問題ありませんが、妊婦健診で体重増加を指摘されたからと言って、食事を摂らないようなダイエットはしてはいけません。運動をして体重管理をすることを心がけましょう。
時期ごとの食欲とうまく付き合うために
妊娠中は、体調が不安定な妊娠初期においてはつわりなどでうまく食べられず、体調が落ちついてくる妊娠中期~後期は食欲も回復し、つわりで食べられなかった反動から体重が増えがちになります。
胃の圧迫や吐き気などで食べられない時は、口当たりの良いものを食べられるだけ食べるようにしましょう。一方食欲がありすぎる時は、おやつの量ではなく食事の量を増やすなどバランスの良い食事を心がけましょう。
よく噛みながら時間をかけてゆっくり食事をすると、十分な満腹感が得られます。
体重管理のために夫婦でできること
体重管理の為には食事だけではなく運動も大切です。
妊娠中はホルモンバランスの変化などで心身ともに不安定になりやすい時期ですし、適度に身体を動かすことで体力もつきますし、気分転換や体重管理にも役立ちます。夫婦で会話しながら散歩をしたり、ヨガをしてみるのもいいですね。
・夫婦で会話をしながら公園をお散歩 ・マタニティヨガやエクササイズを一緒に行う ・会話をしながら食事は2人でゆっくりと |
気分転換やお産に向けた体力作りに夫婦で取り組みましょう。
妊娠中に進んで摂りたい食材
栄養バランスの良い食事が理想ですが、その中でも赤ちゃんの成長の為に積極的に摂った方がいいものがあります。ここでは具体的にどんなものがいいのか見てみたいと思います。
どんな栄養素を摂ればいい?
一般的に良く知られるものとして、葉酸と鉄分があります。これは妊娠中に限らず妊娠前後にも欠かせない栄養素です。
その他にはカルシウム、DHA、ビタミン類があります。一日の推奨されている摂取量と合わせて確認をしていきましょう。
葉酸(推奨480μg/日)
妊娠初期の人に特に必要な栄養分が「葉酸」です。
妊娠前から初期にかけて十分に摂取すると、赤ちゃんの神経管閉鎖障害発症や流産のリスクを低減させたり、ママの貧血を軽減する効果があると言われるビタミンB群の一種です。多く含まれる食品は以下の通りです。
・野菜(ほうれん草、ブロッコリー、アスパラ、小松菜、かぼちゃ) ・豆類(納豆、あずき、きなこ) ・果物(キウイ、オレンジ、マンゴー、イチゴ) |
妊娠初期だけでなく出産後、授乳期にも必要な栄養素ですので、食事で補えない分はサプリメントからも摂るようにしましょう。
食品群 | 食品名 | 摂取量 | 葉酸含有量 |
野菜類 | ほうれん草 | 1/4束(60g) | 126μg |
アスパラガス | 1/2束(60g) | 114μg | |
果物 | イチゴ | 小8個(100g) | 90μg |
鉄分(初期9mg/日、中後期21mg/日)
妊娠中はママの血液量が増えますがヘモグロビン量は変わらない為、鉄欠乏性貧血になりやすいです。赤ちゃんと胎盤を成長させるためには多くの血液が必要なので、鉄分を多く含む食材を進んで摂ることが大事です。
効果的に吸収されるようにするために
・大豆、野菜などに含まれ吸収されにくい「非ヘム鉄」と ・赤身肉や魚介などに含まれ腸で吸収が早い「ヘム鉄」を なるべく一緒に摂りましょう。 ビタミンCやタンパク質と一緒に摂るとさらに吸収を助けます。 |
また、緑茶や紅茶などに含まれるタンニンは鉄分の吸収を悪くしますので、食事中と食後の飲用はなるべく控えるようにしましょう。
食品群 | 食品名 | 摂取量 | 鉄分含有量 |
肉類 | 牛もも肉 | 2切(100g) | 1.4mg |
野菜類 | 小松菜 | 1/4束(70g) | 1.9mg |
豆類 | 納豆 | 1包(50g) | 1.7mg |
カルシウム(推奨650mg/日)
赤ちゃんの骨や歯を作るのにカルシウムが必要となります。妊娠中の血圧を下げる効果もあるので、妊娠高血圧症候群の予防にもなります。
乳製品が苦手な人は大豆製品や小魚、野菜などから少しでも摂取するように心がけましょう。
食品群 | 食品名 | 摂取量 | カルシウム含有量 |
牛乳・乳製品 | 牛乳 | コップ1杯(200cc) | 220mg |
ヨーグルト | 1パック(100g) | 120mg | |
野菜類 | 小松菜 | 1/4束(70g) | 119mg |
小魚 | ししゃも | 3尾(45g) | 149mg |
豆類 | 厚揚げ | 1/2枚(100g) | 240mg |
DHA・EPA(推奨1〜1.5g/日)
DHAやEPAは脳の成長に欠かせない成分ですが、赤ちゃんも同じです。ママが妊娠中に摂取したDHA・EPAは胎盤を通じて赤ちゃんに届きます。最近では妊娠中~授乳中にママがDHAを多く取った方が赤ちゃんのIQが高くなったという報告もあるほどです。青魚に多く含まれていますし、サプリメントをうまく利用するのもいいでしょう。
手軽に食べられる加工食品の缶詰でも、原料そのものにDHAが多く含まれているため摂取は可能です。使っているお汁の中にもたくさん含まれているので、なるべく捨てずに利用したいですね。
食品群 | 食品名 | 摂取量 | DHA含有量 |
魚類 | さんま(焼き) | 1尾(105g) | 1.26g |
マサバ(焼き) | 1切(80g) | 1.2g | |
缶詰 | さばの水煮 | 100g | 1.3g |
いわしの蒲焼き | 100g | 1.4g |
ビタミンB6,B12,C,K
ビタミンB6にはつわりを軽減する効果があり、ビタミンB12やビタミンCには葉酸や鉄の吸収を良くしてくれたりする働きがあります。ビタミンKには骨を丈夫にしたり、出血を止める働きがあるので赤ちゃんの為だけではなく、ママのためにも積極的に摂りたい栄養素です。上記のビタミンが多く含まれる食品には次のようなものがあります。
・ビタミンB6(唐辛子、にんにく、ピスタチオ):つわりの軽減 ・ビタミンB12(かきなどの魚介類、レバー) :葉酸や鉄分の吸収補助 ・ビタミンC(かんきつの果物、野菜、いも) :葉酸や鉄分の吸収補助 ・ビタミンK(納豆、こまつ菜、ほうれん草) :骨を丈夫に、止血効果 |
妊娠中に注意が必要な食べ物
妊娠中に積極的に摂りたい食品があるように、注意が必要な食品もあります。知らなかったと後悔しないように普段の食事から気をつけたいものですよね。ここでは具体的にどのような食品に気をつければいいかをわかりやすくまとめました。
カフェイン
コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインは胎盤を通じて赤ちゃんにも影響します。飲みすぎると赤ちゃんの発育が妨げられたり、ママが不眠になりがちになります。目安として一日2杯程度のコーヒーなら問題ないとされていますが、最近ではノンカフェインコーヒーの種類も多いですし、ミルクを入れてカフェオレにして飲むなど工夫して摂りすぎないようにしましょう。
・カフェインは摂取のし過ぎがよくありません ・1日2杯程度であれば問題はないとされています ・この機会にノンカフェインのものに変更するのも方法です |
ビタミンA
妊娠初期に過剰にビタミンAを摂取すると胎児奇形になる心配があります。主にビタミンAが多い食品はレバーやうなぎです。レバーは鉄分が多いイメージがありますが、妊娠中期でも1日に20~30gを目安にして毎日摂取するのは避けましょう。なお、野菜に含まれるβ-カロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変化するので摂りすぎても心配することはありません。
<妊婦さんが摂取できるビタミンAの上限>
妊娠時期 | ビタミンA摂取量の上限(/日) | サプリメントからの摂取量(/日) |
妊娠初期 | 650〜700μgRE | 600μgRE |
妊娠中期以降 | 3000μgRE | 600μgRE |
<含有量の多い食品>
食品群 | 食品名 | 摂取量 | ビタミンA含有量 |
魚類 | うなぎの蒲焼き | 1/2尾(100g) | 1500μgRE |
肉類 | 豚の生レバー | 1切(40g) | 5200μgRE |
ビタミンAに関しては、必要分を体内で形成してくれるβ-カロテンから摂取することが望ましいという考え方もあります。
生もの・その他
食中毒を避けるためにも生ものの摂取には注意が必要ですが、金目鯛や本マグロに含まれるメチル水銀には赤ちゃんの中枢神経に影響を与える事があります。
これらは週1回程度を目安として毎日摂取するのは控えましょう。また非加熱のナチュラルチーズにもリステリア菌という食中毒菌がいることがまれにあるので注意が必要です。
また、栄養価の高い食材として知られるひじきに関しましても、無機ヒ素が含まれるため摂り過ぎには注意が必要です。
「体重50kgの人が4.7g以上/日を毎日食べ続けなければ問題なし」という指針が発表されていますので、副菜として小鉢に入ったひじきを週に2回程度を目安に摂取しても良いでしょう。
<妊娠中の摂取目安>
食材 | 1週間の摂取回数 |
・金目鯛・めかじき・メバチまぐろ・本マグロ |
1回 |
・キダイ・まかじき・ミナミまぐろ・クロムツ・ひじき |
2回 |
塩分
塩分の摂りすぎは、ママのむくみや高血圧の原因になり赤ちゃんにも影響を及ぼします。妊娠高血圧症候群と診断された場合は塩分摂取は7.0〜8.0g/日が目安となります。診断されていない場合も減塩を心がけましょう。
インスタント食品やジャンクフードは塩分が多く入っています。1食で1日の塩分摂取目安の半分近くに達してしまうことを考えると、可能な限り自炊をしたいところですね。
食品 | 塩分量(1食) |
一般的なインスタント麺 | 3.0〜6.0g |
ビックマックのポテトMセット | 4.5g |
ハーブ
妊娠中はカフェインを控える為にハーブティーを飲むママも多いはず。しかし、子宮を収縮させるなど妊娠中に向かないハーブもあります。
代表的なものとしては、下記のハーブとなります。心配な人は医師に相談してから飲むようにしましょう。
・ラベンダー ・カモミール ・ジャスミン ・ハトムギ ・レモングラス |
どれくらいの摂取なら平気?
妊娠中にはここまで見てきたように、制限される食べ物が多いですが、過剰に摂りすぎないように気をつければそれほど神経質になることはありません。
例えばアルコールなどは禁酒の必要がありますがコーヒーなどは1日1杯飲む程度なら問題ないですし、返ってリフレッシュになって良い面もあります。
ナチュラルチーズに代えて加熱チーズを食べるなど、少しの工夫をして妊娠期間の食生活の変化と上手く付き合っていくようにしましょう。
まとめ
ここまで栄養に関して良い部分、注意すべき部分を見てきました。妊娠中だから特別注意が必要と言うわけではなく、一番大事なことはバランスの良い食事を心がけることです。
赤ちゃんの為だけではなく、ママやパパの為にも食生活を見直す良い機会だと思って出来るところから始めてみるといいですね。
最低限ママが避けるべき食材の過剰摂取を注意すれば、必要以上に考えすぎる必要はありませんので、ぜひ健康的で温もりの溢れる食生活を手に入れてください。