帝王切開分娩の入院〜退院までの流れと費用

帝王切開分娩

異なる記事で帝王切開分娩の基礎知識を取り上げましたが、実際に帝王切開を受けるとなった場合の、入院〜退院までの流れや入院期間、費用はいくらかかるの?といった疑問にお答えし、気になる術後のことを含めて自然分娩との違いを比較しながら具体的にみていきたいと思います。

自然分娩における入院〜退院

病院の方針にもよりますが、入院期間は出産日を入れて初産婦6日間が一般的です。経産婦は少し短い5日間ほどとされています。ただし、経過が母子ともに順調な場合です。ママか赤ちゃんに問題が起これば入院期間は当然長くなります。

産後の入院期間に主に行われることをこれから見ていきましょう。

ママの検診や休息

赤ちゃんのお世話以外ではママはこのようなことを行います。

・会陰部の傷のチェック

・抜糸

・おっぱいマッサージ

・睡眠による休息

赤ちゃんの検査

・黄疸のチェック

・聴力検査

・先天性代謝異常等検査

・ビタミンK2シロップの投与

4つ目のビタミンK2シロップというのは、ビタミンK欠乏性出血症という生後間もない赤ちゃんが発症する病気を防ぐためのものです。予防治療の両方に用いられますが、副作用がないとされる有効なお薬です。

産院によっては、1ヶ月健診の際に投与する場合もあります。

ママと赤ちゃんのこと

・授乳

・おむつ替え

・沐浴指導

経産婦の場合は沐浴指導は除外される場合もありますが、今後の赤ちゃんとの生活パターンをつかんでいく上で大切なことを学んでいきます。

帝王切開分娩における入院〜退院

上記の自然分娩での流れと基本は同じですが、術後数日間はママの容態を注視します。その分自然分娩に比べて入院期間は長く、手術の前日・当日も入れて8〜12日間ほどが目安です。

術後の経過には個人差がありますが、帝王切開分娩の場合は傷口の治癒に時間がかかるため、入院1~2日目は傷の回復の経過をみていきます。

入院1~2日目

この時点では術後の痛みが強く、食事も流動食です。

しかし、産後は血栓ができやすくなるため、血栓症を予防のため自力で歩いてトイレに行くように促されることもあります。

入院3~5日目

切開後の傷口にある糸やホッチキスなどが抜糸され、食事も普通食になり、このころには自然分娩の人と同じ生活を送れるようになります。

6日目以降は、体調や傷の状態が良好であれば上記で説明した赤ちゃんのお世話を開始し、診察で異常や問題がなければ退院となります。

自然分娩との違い

・入院期間の長さ

・術後の痛み

・入院1〜2日目の対応

自然分娩との違いは、大きく上の3点となります。

自然分娩の方が経過も良く、早く退院できるように思うかもしれませんが、出産の際に出血が多く貧血を起こしている場合や、産後の経過が良くなければ入院期間も伸びますし、相応の処置も増えます。

一概にどちらが良いもしくは大変ということではありません。

出産費用

費用面から帝王切開分娩と自然分娩の違いをみていきます。

出産には大金がかかりますが、同時に「もらえるお金」もあります。帝王切開分娩の場合は入院期間も長いため費用負担も大きくなりがちですが、健康保険もらえるお金によって抑えることができるのです。

出産にかかるお金は分娩方法に限らず「分娩費」があります。それ以外にも「入院費」「ママと赤ちゃんのお世話にかかるお金」などが含まれ、総称して出産費用といいます。費用の差が出る部分や、一部保険が適用される費目もありますので、それらをご紹介していきます。

分娩費

  自然分娩 帝王切開分娩
分娩費 約15~25万円 約20~25万円
保険適用 × ◯(3割負担)
備考 吸引や陣痛促進剤、鉗子の処置などは保険診療となります。  

分娩方法における分娩費の相場と保険適用などは表のようにまとめられます。産院などによっても異なりますが、帝王切開分娩の場合は地域や医療機関に関わらず大体これくらいの価格となります。

分娩費以外の費用内訳と保険適用

分娩費以外での出産費用には、下記のように様々な部分で費用が発生します。中でも入院費施設や地域により差が出やすい項目となります。

各産院での詳細確認は必要ですが、保険の適用をまとめるとこのようになります。

  自然分娩 帝王切開分娩
入院費 ×
室料差額・食事代 × ×
母体検査・投薬・処置 ◯(医療行為があった時)
分娩介助料 ×
新生児管理料 × ×
新生児検査 × ×
産科医療保障制度 × ×
出生届・指導料 ×  ×

帝王切開分娩はこの他にも、術後用腹帯ケロイド予防のシリコンジェルシートなど腹部の傷をケアするアイテムの購入費用が加わるため、自然分娩に対して約15~20万円の加算が見込まれます。

出産でもらえるお金

ここでは、帝王切開分娩費用の実質的な負担を大きく抑えられるもらえるお金について見ていきます。帝王切開に限らず、出産をすることでもらえるお金もあります。

・出産育児一時金

・高額療養費

・出産手当金

・医療費控除の還付金

・医療保険の給付金

出産育児一時金

医療機関で保険証を提示した受診をしており、妊娠4カ月以上で出産した際、1児につき42万円の一時金を受け取れる制度で、自然分娩でも受け取れます

支払い方法は産院により異なることと、出産した産院が産科医療補償制度に未加入の場合は受け取り額は40万4000円に少し減ります。(※平成27年1月1日以降の出産)

高額療養費

健康保険が適用され3割負担となった治療費が、自己負担限度額を超えた場合に支給される医療費のことです。

帝王切開は、高額療養費の給付対象となっており、自己負担限度額は年齢や所得に応じて決定されます。

例えば、自己負担限度額6万円で帝王切開分娩における出産費用の総額70万円その内、保険適用となる分娩費や入院費、処置費などの3割負担額30万円であれば、限度額との差額24万円(30万円-6万円)が返還される制度です。

実質の自己負担総額は、

自己診療費用40万円+保険診療の自己負担額6万円46万円

この総額から出産一時金42万円が差し引かれる形となります。

出産手当金

勤め先の健康保険に加入をしており、産後も仕事を続ける方が基本的に対象となる手当です。自然分娩でも受け取れます。

月給から「標準報酬月額」を割り出し、その日額の3分の2を、休んだ日数分受けとることができます。

医療費控除の還付金

1年間で世帯の医療費10万円以上になった場合、確定申告で税務署に申請するとお金が戻ってくるというものです。

医療保険の給付金

帝王切開専用保険ではなく、加入している生命保険に入院・治療特約をつけるか、医療保険を利用するかのどちらかです。

給付金の種類は入院給付金手術給付金があります。

「入院給付金」

入院した日数に応じてもらえる金額です。入院日数を10日とした場合、入院日額1万円のプランに加入していれば10万円が給付されます。

「手術給付金」

規定の金額が決まっているところもあれば、入院給付金の日額に合わせて会社所定の倍率をかけて算出するところもあります。後者の倍率が10倍と規定されていた場合、入院給付金日額1万円であれば10万円が給付されます。

最近では女性特有の病気や妊娠出産をカバーするような特約プランを用意している会社が多くなっており、これらに加入をしていればさらにお金を受け取ることができます。

月額保険料は加入年齢や性別にもよりますが月3,000円~5,000円以内が相場です。

使うかどうか分からない医療保険に保険料を支払うのはもったいない気がするものですが、特にこれから妊娠・出産を考えている人ほど「もしも」の時を想定して加入しておくのも安心です。後悔することのないよう、見積もりだけでも早めにしておくのが良いですね。

<医療保険の注意点>

・妊娠をしていると加入できない場合がある

・妊娠中の加入には条件が付くことが多い

みんなが抱く不安

手術の方法や入院の流れはわかっても、実際術後の痛み傷口はどのようなものか、2人目以降の家族計画など、心配事はたくさんあると思います。ここでは代表的ないくつかのケースをみていきます。

術後の痛みと後陣痛

出産後1日目・2日目は麻酔も切れ、痛みのピークとなります。この頃に悩まされる主なものは、下記の3点です。

・傷口の痛み

・子宮を収縮させる後陣痛

・麻酔の副作用による頭痛や吐き気

痛みが強い場合は痛み止めを処方してもらえることもあるので、無理に抱え込まずに相談するようにしましょう。母子同室の場合は授乳・おむつ替え等痛みと闘いながらのお世話がありますので、肉体的にも精神的にも大きな負担があります。

術後はほぼ毎日サージカルテープで傷口を保護し、週1回の頻度で剥がれてきたら張替えます。

6か月ほど経過すると、テープをしている間は痒みや痛みほどんどなくなります。しかし、意図的に触れたり、赤ちゃんのお世話中に蹴られたりすると痛みが走ります。

痛みは術後少しずつ和らいでいき、1年経過するとほとんど感じる事はなくなりますが、稀に傷の表面的な痛みを感じることがあります。傷口に触れる生地やその時の気圧・湿度によって痒みが出ることもあります。

お腹の傷

切開方法にもよりますが、横切開の場合は目立ちにくく、パンツを履いたときに隠れます。

経過によっては傷口の皮膚が赤くもりあがる場合(ケロイド状)がありますが、予防するためのテープやクリームなどもありますので、前もって調べておくのも良いかもしれませんね。

今後の家族計画

自然分娩・帝王切開を問わず、出産後は子宮の内面が十分回復していないため、細菌感染が起こりやすくなっています。ママの健康を守る意味からも1か月検診で異常がないと確認されるまでは性生活は避けて下さい。

また帝王切開分娩後のママは必ず1年以上あけて妊娠するように計画しましょう。

その理由は、お腹と子宮を切開し、その傷の部分が周りの子宮壁より薄くなるので、二人目以降の妊娠・出産時に子宮破裂を起こすリスクが高まるのです。二人目以降の妊娠に向けて子宮が回復するのを待つためでもあります。

次の出産の分娩方法

一般的に、一人目の子が帝王切開だった場合は、子宮破裂などのリスクを考慮し、二人目も帝王切開分娩を勧められます

しかし、必ずしも帝王切開をしたら次の出産時も必ず帝王切開になるというわけではなく二人目以降の分娩方法は、前回の帝王切開の経緯や術後の経過を元に決められます。

バースプランの活用

病院によっては、バースプランを共有してくれるところがあります。文字通り出産計画のことで、

「術後の痛みをできる限り軽減してほしい」

「母子同室を希望しているが、痛みが落ち着くまでは別室で、授乳だけの対応にさせてほしい」

など、産院側のスタッフとのコミュニケーションを密に図ることで、少なくとも入院期間中の心配や負担は大きく軽減することができます。

退院後のことも含めたフォローについては、パパと相談しておきましょう。

パパができること

産後のママはお産疲れや体の変化、赤ちゃんのお世話などで心身ともに疲れています。そういう時こそパパの精神的なサポートがとても心強い支えになるのです。2人で育てるという気持ちを大切に、育児・家事に積極的に参加しましょう。

授乳・おむつ替え

約3時間に1回の頻度で授乳を必要とする赤ちゃん。術後のママは立ち上がるだけでも辛いのです。そんなママのところへ赤ちゃんを連れて行ってあげてください。

かがむ姿勢や、前傾でお腹に力が入る体制は負担になりますので、おむつ替えも可能であればパパが率先して行うと良いでしょう。

ママを休ませて

普段の家事をママに任せきりのパパは、退院して戻ってきたママに「食事は?」「洗濯は?」なんて質問攻めにするのではなく、ママの身体を休ませることと、赤ちゃんのお世話を第一に考えてあげてください。

パパが動いて解決できることは、ぜひそのようにしてほしいですし、出産準備のひとつと捉えて妊娠中から家事の手伝いをしてシミュレーションしておくと、産後に慌てることが少なくなるかもしれませんね。

ママの不安を受け止めて

出産してすぐ、パパママになるかと言うとそうではありません。おむつ替え、授乳などお世話を通じて少しずつ赤ちゃんとの信頼を築きあげていくのです。

思うようにいかない育児に対し、ママはとても心細く思い、自信を持てないでいます。そんな時は、側でママの話を聞いてあげてください。

具体的な解決策が欲しいわけではなく、気持ちを分かってほしいのです。そんな理解者がパパであったら、この先の育児を頑張っていける、そんな気持ちになれると思います。

まとめ

妊娠中の経過が良好でも、帝王切開分娩になるケースは誰にでもあります。いざというときに慌てないように、基礎知識は頭に入れておくようにしましょう。

ここまで自然分娩帝王切開を比較しながら、様々な情報を挙げてきました。もし帝王切開分娩になったらと考えた時、金銭面や手術の方法など、様々な不安が出てくると思います。特に術後の痛みや傷など自分の体を切ることはその後の経過も含めて一番の心配点なのではないでしょうか。

しかし、自然分娩の場合でも会陰切開をすれば痛みや痒みが起こります。切開前に裂けてしまうと治りも遅く、肉体的には大きな負担がかかります。当分はドーナツクッションの上にしか座れませんし、痛みを抱えながらの授乳はとても辛いものです。

つまりは分娩方法が違っても、お産という大きな仕事を終えたママの身体には大きな負担がかかることに違いはありません

産み方ではなく長い妊娠期間を経て、人ひとりを産みだすという大役を務めあげたママが、自分自身をまず認めてあげて欲しいと思います。

ママの心の内はわからなくても、ママにとってパパの支えはとても大きなものです。ママへの感謝の言葉をたくさんかけてあげることで心のしこりを少しでも解消していくことができるのではないかと思います。

どんな方法であっても大切なことは

お腹の赤ちゃんが元気に生まれてくること

ママが健康で過ごせること

この2点に尽きるのではないでしょうか。

産院や夫婦間のコミュニケーションを密にとりながら、ママ自身が納得のいく出産となるよう考えていくことが大切です。

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